2005年、工学院大学建築学部における「測量実習」の新設について、当時の建築学科で後藤治教授(現:工学院大理事長)から塚田野野子社長に打診があった。この「測量実習」は選択科目の1つで2006年度に開講された。前半が測量実習で航測会社の技術系社員が担当し、後半のGIS演習は東京地図研究社(非常勤講師として塚田社長)が担当している。なお、2021年現在はまちづくり学科の村上正浩教授が主担当となっている。 当社が担当するGIS演習の開講期間は6〜7月で、八王子キャンパスの情報処理演習室において、主に2年生が約70名ほど受講する。講義新設後の数年は「SIS」を使った演習、残りが座学と「カシミール3D」による地図作成であった。その後、2008年に「ArcGIS」が導入され、GIS実務経験が長い社員が練り直した内容がベースとなり、毎年少しずつ担当社員がブラッシュアップを重ねたカリキュラムとなっている。その他、導入として等高線の手描きの演習、Google Earthを用いたプレ実習も行う。 実際の講義では、若手社員数名が演習のインストラクターやアシスタントとして参加し、一時期は講師の代理として教壇に立つこともあった。1人1台のPCが宛がわれる実習室にズラリと居並ぶ若い学生たちから一斉に注目を浴び、思わずたじろいでしまう社員もいたが、まだやんちゃさの残る10代の学生と直に接したり、TA担当の院生たちと協力し合うなど、教育現場、利用者の立場から見たGISを体感する貴重な場となっていた。また2015年までは秋季の後期授業として、新宿キャンパスの2部学生に対して土曜夜の測量実習も担当したが、社会人学生ゆえ、より熱心で集中して演習に取り組んでいたのが印象深かった。2020年からはオンライン講義も導入され、今後は演習室の仮想PCを利用する仕組みへと進化している。 一方、社会人専修機関である大学校の講師・アシスタントも担当することもあった。2006年、国土交通大学校測量部の担当官とたまたま知己であった石川に、専門課程の講義である「GIS通論」の講師役の打診があった。受講生は、これから官公庁や自治体で専門職を担う技官であり、若いとは言え学生とはレベルが違う。そこで、受注業務の裏事情や、GISならではの失敗談、また地理空間情報が社会でどのように活用されていくべきかなどを織り交ぜ、基礎概念ではなく実務に役立つ知識を伝えるよう工夫した。国交大での講師は2013年まで、毎年1、2回の講義を担当し、2009年からは先方の要望に添ってArcGISを使った演習も取り入れた。また、2008年から7年ほど、国交大におけるGIS実習のアシスタントも請け負い、ここで得たノウハウが工学院大学における講義資料のベースとなり、見直しや改善に繋がっている。 これとは別に、2019年から芝浦工業大学においても、非常勤講師として半年間、週1回の講義を請け負うことになった。こちらは建築学部の村上公哉教授が担当され、建築や都市計画を志す3年生30~40名ほどを対象とし、最初から最後まで最新のArcGISアプリケーションを使用した演習形式である。非常勤講師2名体制で、そのうち1名は当社の中堅社員(谷口亮)が専属で担当し、GISの概要や操作・分析法をテーマとした全14回中10回目までの講義を行っている。 芝浦工業大学で初めて開講された講義であるため、一からカリキュラム作成に携わり、社内に蓄積されたノウハウをふんだんに活用したやや高度な内容も含まれる。具体的には、3次元データの可視化や人口推計、適地選定などを題材とし、専門的な建築学生向けとなるように工夫している。開講から既に3年が経過したが、学内では非常に人気が高い講義となっており、事前の募集では倍率2倍ほどになっている。 こうした大学での講義における経験や資料を活用し、昨今では民間企業におけるGIS導入のハンズオンを当社社員が担当することも増えている。